香りのパワー
週刊NY生活紙に毎月一回香りや精油についてコラムを書いています。2008年~2016年「真理子の香りの旅」、2017年~「香りのパワー」。2018年から古舘みどりさんの素敵な絵も入りました。
くらしの中のローズ 11/24/22
植物界の中でも完璧な美の象徴であるローズ。高貴な香り、ビロードのようなやわらかさ、幾何学的な形状、ローズの純粋に美しい存在は宇宙の創り出した奇跡のようです。
遠い昔から、多くの地域や文明では、ローズは観賞用としてだけではなく、宗教の儀式や浄化、来客を迎える時、室内の清浄、飲用、お菓子、薬用、美容、香水など日常的に使われ、その土地の暮らしや文化と深く関わってきました。香り高いオールドローズの開花は初夏の短い期間です。手で摘みとられた花々は、水で蒸留されローズ水に、充分な花の量があればローズ水の上に浮く精油が採れ、また乾燥したり保存食として加工され、次の年のローズの開花まで一年を通して使い続けることができます。
ローズの効能は、浄化、浄血、精神安定、のどを潤し消炎を助け肺を丈夫にする、胃腸の働きを助け消化を促進、胆汁分泌を促し、肝臓の保護と解毒を助ける、脾臓の働きを助ける、利尿促進、毛細血管の強化、生殖器系の浄化、ホルモン分泌の調整、肌を清浄し組織を引き締めるなど、美と健康に大変有益です。地球が揺らぐ不安定な時代に生きる我々に、ローズは宇宙から授かった崇高な美と香りそして多くの薬効を惜しみなく提供してくれます。ご自分に合った方法で生活に取り入れてみられてはいかがでしょうか。
ホワイトカーネーション 母の匂い 10/27/22
カーネーションの和名は「ニオイナデシコ」、江戸時代に日本へ渡来した頃は、香りが良いので「ジャコウナデシコ」とも呼ばれていたそうです。街角の花屋で年中見かけるカーネーションですが、部屋に飾ってみると意外と美しく、そのうえ良い香りもあるのに驚きました。選んだのは白い小花のカーネーション、一本の茎にいくつもの花が付いていて、日ごとに花が開き白さが映えてきます。白い八重のジャスミンを少し大きくしたような花からは、思いがけない甘い香りが漂ってきました。
カーネーションの香料は少量ながら生産されていて、白、あるいはうすいロゼの花から溶剤によって抽出されています。保留性、持続性の良い花香料として高級香水に使われています。
カーネーションの花の香りは甘くロージィーで蜜様、わずかにクローブ様の香りで、ユリのような拡散性はなく、近くに寄って顔を近づけると匂ってきます。やさしい姿、ソフトさ、甘い包容力のある香り、なるほど、どれもがお母さんらしいイメージで、母の日に贈る花の定番にふさわしいイメージを持っています。花びらが幾重にもソフトに重なる純白の花、そばに寄ると匂う甘くあたたかい香り、母親の曇りなき愛情のようでもあります。お手頃で丈夫で長持ちのするカーネーション、時にはそばに置いてみると心がホッとするかもしれませんね。
ペパーミント精油の使用 9/23/22
ペパーミントはたぶん芳香のある植物で、いちばん需要が多くよく知られている香りのひとつでしょう。はっきりとしたわかり易い香りは、食品から医薬品、コスメティックから家庭用品まで、あらゆる分野で利用され日常生活の中に浸透しています。また古代から現在に至るまで薬草としての治療効果は、消化促進、駆風、健胃、健脳、神経強壮、鎮痛、消炎症、抗炎症、鎮痙、去痰、利尿、虫さされ、抗菌、防虫など多岐に渡ります。
ハーブとして使用するペパーミントと比べると、ハーブを蒸留して得られた精油は、ある種の成分だけがすでに非常に凝縮され、強い作用をもった液体です。特に神経系や脳への強く素速い刺激、鼻腔をのぼる時の冷感と強烈な香り、皮膚や粘膜への冷却感など、精油独特の刺激に対して、適切な使用量、使用頻度、使用目的など、注意が必要です。
他の精油や基材と調合することで、ペパーミントの強すぎる香りや作用を緩和し良さを引き出す使い方、また筋肉痛や打撲などの消炎や鎮痛剤として局所的な使用などが、ペパーミント精油の有効な利用法のように思います。注意:小さなお子さんや心臓疾患、動悸、てんかんなどの症状がある方は使用を避けるか、注意が必要です。
タイム 強力な抗菌力 8/25/22
晴れ渡る地中海のように、さわやかで明るく元気なハーブ、タイム。地中海沿岸が原産のタイムはローズマリーやセージ、ラベンダーなどと同じミント科の芳香植物です。背丈が低く小さな葉をびっしりとつけ、初夏に咲くうすいピンクやパープルの花はミツバチの大好きな花です。
タイムは大昔から食用、薬用植物としてふんだんに使われてきました。料理の風味付けと同時に肉や魚の毒や臭みを消し、豆や野菜に加えると消化吸収を助けます。薬用ハーブとしては、鎮痙作用、抗菌、抗感染作用、強壮作用があり、痙攣をおさえる作用は咳や胃痙攣など内臓筋の痙攣を鎮め、強力な殺菌力は空気の殺菌、患部の消毒や鎮痛、気管支系や消化器系の粘膜の殺菌に効果があります。またタイムの芳香は神経に働きかけ、神経の強壮、脳の強化、心身の元気の回復に役立ちます。タイムの精油には、タイモールやカルバクロールという刺激性のある強力な殺菌、抗菌作用のある成分が含まれているため、精油の使用には注意が必要です。お使いになる場合はタイム種の中でも穏やかなリナロールタイプを選ばれると良いでしょう。
白いマリーゴールド 7/28/22
暑い日が続いていますが、皆様お元気にお過ごしですか?今回は太陽のような花マリーゴールドをご紹介します。先日出席した卒業式のレセプションでは、Covid対策からお料理はすべてブラウンのペーパーボックスに入れられ、ガーデンでふるまわれました。アペタイザーからデザートまでどの箱も開けると目に飛び込んでくるのは色とりどりのマリーゴールドやオーキッドの花でした。初めて食べたエディブルフラワー、マリーゴールドの花を噛んだ瞬間、あっ同じ香りが、、、私の好きな精油タジェットの香りが口の奥に広がり、本当にこんな香りがするのだとひとり感動していました。マリーゴールドには多くの種類がありますが、精油に使われるのは主に植物学名Tagetes minuta種です。黄色やオレンジの花でななく小さな白い花を咲かせ、南米原産でブラックペルビアンミントとも 呼ばれます。ペルーを始め南米各地では葉の部分がよく料理に使われています。精油は小さな白っぽい花を含めた全草を蒸留し採られます。蒸留後、時間が経つにつれて粘度が増し色も濃くなり香りも安定してきます。タジェトンと呼ばれるタジェット独特の成分を含む香りは、グリーンアップル様のフルーティでキャンディのような香り、グリーンなハーブ様の香り、もったりとした熟成された甘さを感じ、多幸感のある香りです。精油は食品、アルコール飲料、タバコの香り付け、香水などに使われています。他のキク科の精油のように皮膚に対して効果的に働き、抗菌、抗炎症、硬化組織を柔らかくする効果も期待できます。ハーブティーとしても飲まれ、風邪、咳、気管支炎、胃炎、腹痛などに良いとされています。駆虫効果もあり、束にして吊り下げておくと家の中の虫除けにもなります。
ワイルドローズの蒸留 6/23/22
メイン州マウントデザート島を訪れるようになって5回目。いつかここに咲いているワールドローズの花を蒸留したいと思い続け、今回やっと実現しました。滞在中の2週間のあいだにタイミング良く花が咲き始め、3回の蒸留を試みました。東海岸一帯に群生するこのローズはビーチローズとも呼ばれます。また日本、韓国、中国が原産であることからジャパニーズローズとも呼ばれます。日本名はハマナス。植物学名はRosa rugosa。日本ではハマナスの保全に力を入れているのに対し、こちらでは増えすぎてinvasive種に指定されています。濃いピンク、淡いピンク、真白の花、香りの強そうな花を選んで蒸留をしました。手元にあるダマスクローズの蒸留水と比べると香りは穏やかですが、口に含むと上品なローズの香りが広がります。ローズヒップ/ローズの実はビタミンC豊富でティーやジャムなどに、花も乾燥させて香りと薬効を兼ねたローズティーになります。海辺の砂地や潮風にも強く、海岸線が良く似合う小ぶりのワイルドローズ。ここでは夏の訪れを告げ、人々の目を楽しませる元気な友人のような花です。
コリアンダー フレグラントな種の香り 5/27/22
NYは初夏の素晴らしい季節ですね。皆様いかがお過ごしでしょうか。
コリアンダーの精油と聞けば、あのくせのあるコリアンダーの葉のにおいを連想されることでしょう。しかし一般的には種を蒸留したもので、葉っぱのにおいからは想像もつかないほどパフューミーな香りです。ウッディ、スパイシーに包まれた甘くフローラルな香りはユニセックス調。前回ご紹介したホーウッド・リーフ同様、リナロールという良い香りの成分を多量に含み(50~80% )、香りの調合には大変役立ちます。リナロールは鎮痛、鎮静作用も期待できる成分です。またスパイスとして食品にも重宝され、コカコーラのシークレットレシピに入っている材料の一つだったり、東欧の伝統的なボロディンスキーダークライブレッドには欠かせない芳香です。インドのカレー、ソーセージ、ソーダやアルコール飲料にも多く使われています。変幻自在に混じり合い良い香りを作り出すフレグラントなコリアンダーの種の香り、不思議な香り立ちをお試しになられてみてはいかがでしょうか。
香り:ウッディー、フローラル、スイート、スパイシー、ハーバル、落ち着きのある華やかな香り。
効能:鎮静、鎮痛、神経強壮、抗うつ、健胃消化促進、抗菌作用。
使い方:植物油で薄め、香油、マッサージオイルとして、お部屋のワンポイント香りとして使用。
ホーリーフ 臭樟から芳樟へ 4/28/22
爽やかな春の空気に包まれ、新緑の美しい季節となりました。今回は軽やかな木の葉の香りをご紹介します。クスノキ(楠・樟)の変種、芳樟の木の葉を水蒸気蒸留して採った芳葉油をホーリーフオイルと呼んでいます。植物学名はCinnamomum camphora、しかしこの名の元、種や抽出部位、生育地などにより、カンファーホワイト油、ホーウッド油、ホーリーフ油、ラビンサラ油(マダガスカル産)と、異なる香りの精油が存在しやや紛らわしくもあります。近年乱伐のため入手困難となったローズウッド精油の代用として脚光を浴びたのがホーウッド/リーフ精油でした。どちらもローズ様のフローラルなトップノートが特徴です。原産、主産地は台湾・中国南部ですが、日本でも戦後、香料会社が台湾から種を持ち帰り鹿児島県で増産を開始し、最盛期には年間3トンの精油が生産されました。台湾では、もともと薬品的価値のある成分”樟脳”の採れないクスノキの種類は、「臭樟」と呼ばれ敬遠されていたそうです。しかし明治の末期、この木から”リナロール”という、香粧品の原料として大変価値のある香りの良い成分が採れることがわかり、「芳樟」に改称されたそうです。
ホーリーフ精油の香りは、約90%近く含まれるリナロールにより、木の葉の精油でありながら大変軽やかでフローラルな香りです。色々な香りとブレンドしやすく、ボディケアやスキンケアのブレンドに、またさり気ないお部屋の香りとしてお使いいただけます。
カジェプット/カユプテ お手元に一本 3/24/22
一雨ごとに春めいてまいりましたが、皆様お元気にお過ごしでしょうか。カジェプット(Cajeput)、聞き慣れない植物名かもしれませんが、カジェプットの精油はかの有名なタイガーバームにも使われています。ユーカリと同じ仲間で、なかでもティトリーと近縁の、東南アジアやオーストラリアを原産とする常緑樹です。白っぽい、剥がれやすい樹皮が特徴で、”カユプテ”はマレー語で白い木を意味しています。繁殖力が強く、湿地帯に植えると土壌を乾燥させる特性があります。若い葉や小枝を蒸留して精油を得ます。
香り:ユーカリ様の樟脳的な清涼感の中に甘くフルーティでやや薬品的な香りが混じった、ユーカリよりもマイルドで、ティトリーよりも爽やかな香りです。
効能:風邪、喉の痛み、咳、気管支炎、筋肉痛、関節炎、リウマチ、神経痛、また香りのエネルギーは現状を受け入れ自分のゴールに向かって前進し状況を向上させると言われています。
使い方:単独でも、他とブレンドしても使いやすい精油です。気管支系にはティッシュや手の平に一滴付け吸入、体の痛みにはスプーン一杯の植物油に3滴混ぜ部分的に擦り込む。ディフューザーで拡散させる。価格も手頃で手元に置いておくと便利な精油です。

さわやかな姿と香りは春に良く似合い、
白い小さな花を3月から4月に咲かせ春の訪れを告げます。
東アジアを原産とする温帯から熱帯に分布するクスノキ科の落葉小
高木で、日本にも生育しています。
枝が緑色を帯びていることからアオモジとも呼ばれ、
日本の花屋さんでは春の花として2月頃に出回るそうです。
枝一面に鈴なりに連なった小さな緑色のつぼみは3月になると白や
淡黄色の花を咲かせます。
つぼみはつぶすとレモン様のさわやかな香りがあり、花、葉、
木部、実の各部に香りがあるのが特徴です。
精油は実を蒸留して採り、メイチャンあるいはリツェアクベバ (Litsea Cubeba)として売られています。スパイシー、
ウッディなレモン様の香りは、レモングラスによく似ています。
お互いに別の植物科に属し、レモングラスは葉から、
メイチャンは木の実から精油を蒸留するのに香りはそっくり、
自然の創作は無限ですね。単独でも、
また他の精油とも合わせやすく、
市場価格もお手頃で使い易い香りです。この春、
お部屋のワンポイントフレグランスとしていかがでしょうか。
アンジェリカ 天使の薬草 1/27/22

根に最も強い香りと薬効のあるセリ科のアンジェリカは、
昔から毒や疫病に特別な力があると信じられ、天使の薬草、
聖霊の根と呼ばれてきました。
寒さに強いこの植物は2メートルほどに成長し、
パープルの茎と黄緑色の葉や花のコントラストが印象的で、葉、
茎、種、根の全草を利用することができます。
苦味のある土っぽい強烈な根の香りは、
鼻腔に入るやいなや神経を滋養し、心を落ち着け、
心身を強く元気にします。土や薬草の匂いの中に、
ムスク様の動物的で官能的な力強さ、
ブラックペパー様のスパイシーな刺激性などが一体となった複雑で
深みのある香りは、
高級香水やリキュールのフレーバーにも使われ、
少量で効果を発揮します。香水の素晴らしいベースを作るように、
心身にも働きかけるアンジェリカは薬草としての効能も数多く、
健康回復、体力賦活、神経強化、血液浄化、感染防止、消化促進、
駆風、鎮痙、風邪、流感性感冒、気管支炎、咳、頭痛、月経困難、
関節炎、リウマチなどに効果的です。
精油は大変強いため少量を使うことが大切です。
ボディオイルなど広範囲に肌につける場合植物油と混ぜ1%
以下に希釈すること、またつけた後UV光線を避けましょう。
セージ 賢人の聖なるハーブ 12/17/21
新年明けましておめでとうございます。昨年も香りのコラムをご覧いただきありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
頭脳を強化し、精神を落ち着け、肉体に生命力を蘇らせる力強いセージの香り、乾燥させたセージの葉をもんで鼻に近づけると、マスキュランでパワフルな香りが頭や神経、体にしみ入ってきます。
「庭にセージを植えている者がどうして死ぬことがあろうか」14世紀にサレルノの医学者はそう言いました。地中海沿岸を原産とするこの強烈なハーブは長い間薬草として、料理の香味として、そして浄化のために使われてきました。植物学名はサルビア オフィシナリス(薬用サルビア)、サルビアとは救う、治癒するというラテン語に由来しています。この植物が万能薬のように重宝されていたことを示しています。頭脳や神経系等の強化、血液の循環を良くする、利尿作用、消化促進、生理不順、閉経期の障害、口内や気管支系の殺菌、感染症、外用で皮膚や頭皮を殺菌し健康に保つ、など数多くの効能があげられています。
葉を蒸留した精油の香りはくせのあるグリーンな香りで、ユーカリや樟脳のような薬品的な清涼感がベースにあります。神経毒生のある成分も含まれているため、セージの精油の使用はおすすめできません。乾燥させたセージが最も使いやすく、束にしてつるしておくと便利です。葉をもんで香りを吸い込んだり、お料理やティーとしてもすぐに使えます。くせのある香りでが、慣れると頼りになるハーブです。そして「神聖なハーブ」と呼ばれる”Sage”には、賢人、知恵の豊富な老人という意味があるように、そのエネルギーは場や心身を浄化し守り、深い知恵で災難から人々を、母なる大地を救い、癒すと言われています。2022年も皆様にとってどうぞ良いお年でありますように!
注意:妊婦、授乳中の方、子供、てんかんのある方は使用しない。
ローズオットー 花の香りを超えた香り 11/26/21
ローズオットー、これはローズの種類ではなくローズの精油を指します。ローズを水蒸気蒸留して得られた精油をローズオットー、溶剤で抽出された香り成分をローズアブソリュートと言い、抽出の仕方によって香りが異なります。バラの花に顔を近づけた時の匂いとやや異なり、収斂的なスパイシー感、ハニー様の豊かな蜜の甘さ、堂々とした高貴な香りは、花の香りを超えた存在感を感じさせます。オールドローズと呼ばれる小ぶりで香りの強いダマスクローズ種はブルガリアが主な産地で、開花は普通5月半ばから6月半ば、最も香りの強い早朝から午前9時にかけて手で花を摘み、新鮮なうちに蒸留を行います。約4000kg~5000kgの花からとれる精油は約1~1.5kgと大変貴重で高価です。精油はうすい黄色から緑色、温度が約20度C以下になると結晶化し凝固しますが温めるとまた溶解します。
花の女王と呼ばれるローズはその姿と香りの美しさから、美と完全さの象徴とされてきました。ローズオットーの香りは、人間に寄り添うのではなく、自らの純粋さと高貴な香りによって人々の心やマインドを引き上げるのです。ローズオットーの香りを嗅ぎ、香りに触れ、心身を微調整し、残りわずかとなった2021年を健やかにお過ごしくださいませ。
使用法:10%以下に薄めた精油を手の平にとり香りを嗅ぐ、植物油でさらに薄め身体に塗る。
秋も深まり紅葉の美しい季節になりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
色とりどりの落葉を踏みながら森を散歩していると、自然に倒れた巨木を見かけます。地面に静かに横たわり、朽ち果てて行くその姿はあたたかく穏やかです。生きているとは言えないけれど、死んでいるとも言えない。苔が生え、キノコが育ち、無数の微生物と共存し、悪臭を放つこともなく土に還って行きます。
精油の中にも、倒れて何年も経った倒木から採れる香りがあります。ひとつは沈香木、もう一つはパロサントです。ユカタン半島からペルーにかけて中南米地域のドライな土地の林の中で見かけられ、エクアドルやペルーが主な産地です。ソマリア近辺の砂漠地帯に生育する乳香樹や没薬樹と同じ科に属します。パロサントとは神聖な木という意味で、昔から心材を軽く燃やし空気や場の浄化、また病気の治療に使われてきました。パロサントの樹命は約30年から40年、自然に倒れた後、少なくとも2年以上経った倒木を使用します。良い状態で長い期間を経た倒木ほど良い芳香を蓄えています。
香り:大変落ち着いた神秘的な深い香り、乳香とどことなく似ています。
使い方:あらかじめ10%以下に希釈したものを別のボトルに作っておくと使いやすい。空気や場の浄化にはパロサントのスティックを軽く燃やす。良質の木を少量削り香炉で間接的に薫く。
ニューヨークの学校もついに登校が始まり、街には子供達の姿も増え、ザワザワとした活気が戻ってきました。さわやかな秋の活動的な季節を迎え、皆様いかがお過ごしでしょうか。
シナモンは精油の中でも最もホットなオイルと言われ、抗菌力もトップランクです。スパイシー、スイート、メタリック、薬品的な異質な甘さと辛さ。シナモンの香りを嗅ぐとライトにスイッチが入るかのような、エレクトリックな信号のようです。ピリピリとした甘い香りは停滞した気に快い刺激を与え、心身を活発にさせ、この季節にぴったりです。
シナモンは東南アジアやスリランカなど熱帯地方原産で、木の外側の樹皮を剥ぎ取った後に出てくる内側の樹皮を使います。大昔からスパイス、香、薬として重宝され、気分のスッキリするコカコーラのフレーバーにも欠かせない原料の一つです。漢方では芳香性健胃薬とされ、腸の緊張を緩め、蠕動運動を促し、お腹に溜まったガスを出しやすくします。また熱い性質は身体を温め循環を良くします。精油は皮膚刺激性が強いため、シナモンのスティックやかけらをティーやココアに入れたり、お料理やお菓子に利用されるのがおすすめです。
注意:精油は皮膚を刺激するため肌につけることはおすすめしません。またディフューザーから出る香りに顔を近づけると鼻や喉の粘膜を刺激するため注意して下さい。
パチュリ 奥深い美しさ 8/27/21
地に足をつけて暮らす。社会が不安定な時、人々は本能的に身の安全と安定を探します。そして前に進む力を必要とします。
パチュリは東南アジア、熱帯地方原産のシソ科の植物です。暑さは好むけれど直射日光は好まず、土の湿った環境でよく生育します。収穫された葉は数日陰干しされ、8〜10時間位かけてゆっくりと蒸留されます。茶褐色で粘性のある精油は濃厚な香りを醸し、動物的で力強く土っぽく、官能的でもあり一度肌につくと長く香りが残ります。香りの保留性のよさに加え、他の香りをささえ、調和し、より持続性のある魅力的な香りに変化させるパチュリは香水のベースノートとして大変貴重な存在です。またパチュリの葉は長い間、薫香や薬草としてアジア各地で使われてきました。パチュリの奥深い美しさは生命力を強くささえ、私たちの嗅覚に深く沁み入り、前進するパワーを生みだすでしょう。
効能:殺菌、強壮、皮膚細胞賦活作用
使い方:単独の香りは大変個性的で好みが別れますが、他の精油とブレンドすると素敵な香りが生まれます。植物油で薄め、香油やボディオイルとしてお使いください。
ワイルドブルーベリー 神秘的な青い色 7/29/21
久しぶりにNYを離れ、今回はメイン州のマウントデザート島からお便りします。こちらは今、ワイルドブルーベリーの季節です。直径0.5mm~0.8mm位の小粒のブルーベリーです。遠い昔、氷河で荒れ果てた寒冷の土地に生き残った数少ない植物のひとつだそうです。ネイティブアメリカンの人々にとって大変貴重な食料(実)であり、薬草(実、葉、花、根)でした。原産はメイン州からカナダ東北部にかけての東海岸、自生かつ野生種のため現在でも同じ地域でしか生育していません。過酷な自然環境で生き延びるワイルドブルーベリーは、その皮にアントシアニンという青い色素の抗酸化物質を多量に含んでいます。ワイルドブルーベリーがたっぷり入ったブルーベリーパイやジャムはこの辺りの名物です。青い海、青い空、穏やかな水平線、海風に吹かれながら夏の太陽をたっぷり浴びたブルーベリーは深く神秘的な青い色をまとい、メローでほのかに甘くフローラルフルーティーなみずみずしい香りは、私達のボディ、マインド、スピリットを沈静し心身をリフレッシュしてくれます。冷凍のワイルドブルーベリーは手に入りやすいのでスムージーやマフィン、ジャムなどお試しになられてはいかがでしょうか
スペアミント 6/25/21
和名でミドリハッカとも呼ばれ、フレッシュな生の葉で淹れたティーは美しい緑色の大変美味なハーブティーです。暑い夏のアイスミントティーは最高のリフレッシュメントとして格別です。ひと口にミントと言ってもその種類は多く、しかしスペアミントとペパーミントはその中でも代表的な2つのミントです。似ているようでちょっと違うこの2つ、実はスペアミントはペパーミントの親にあたります。スペアミントとウォーターミントの交配種であるペパーミントは、スペアミントから甘くさわやかなミントらしさを、ウォーターミントからシャープで突き抜ける清涼感を受け継ぎました。親であるスペアミントはミントの中でも古株で世界各地で昔から食用や飲み物として利用されてきました。有名なモロッコのミントティーも生のスペアミントをたっぷり使って作られ、モロッコの人々の日常に欠かせないティーです。成分も大きく違い、ペパーミント精油にはスースーする冷感を感じさせるメントールが約半分位含まれているのに対し、スペアミント精油には殆ど含まれていません。
効能:健胃、消化促進作用、駆風(お腹のガスを出す)作用、神経の調整、バランス作用。
使い方:ハーブティー(生葉 or 乾燥葉)、精油はティッシュなどにつけて置いておくと部屋にさわやかな香りが漂います。くせのある香りのため、ペパーミント精油やオレンジ精油などとブレンドすると心良い香りが生まれます。
ライムゼスト 爽快なパンチ 5/27/21
シトラスの中で最も清涼感があってシャープな香りのライム。手でぎゅっと絞ると、ジュースのさわやかな香りと果皮の苦くシャープでグリーンな香りが爽快に鼻を突き抜けます。暑い国で育ったライムはまさに夏の香り、そして果皮を圧搾してとれた精油は夏の香りの濃縮版です。他のシトラスと比べ、一度匂ったことのある人はすぐに認識できるとてもハッキリとしたライムの香りは、心と神経に活力を与え体を元気にします。バスルームのタオルやバスマット、玄関マット、ティッシュなどシミの気にならない所に1〜2滴落とすだけで涼しさが演出されます。ディフューザーにはライムだけでも、またユーカリ精油とブレンドするとさらに涼しさが増し空気の清浄にも役立ちます。収れん作用があるため、ふくらはぎのマッサージにも向いています。ゼラニウム精油とブレンドして植物油と混ぜ、ふくらはぎや足をマッサージすることで、リンパの流れを促進し利尿を促し、むくみや疲れを改善します。ライムの香りでこの夏を最高にさわやかにお元気にお過ごし下さい!
春たけなわ、色とりどりの花や新緑にあふれ、天地のエネルギーに満ち満ちた陽春の季節を迎えています。皆さま、お元気にお過ごしでしょうか。今回は、さわやかな春の風に乗って通り過ぎる匂い、を連想してマグノリアの香りを選んでみました。NYでも3月から5月にかけて豪華な花を咲かせる現在見頃の花です。しかし香りは殆どありません。マグノリア精油は植物学名Michelia Albaという種類から抽出します。ホワイトチャンパカ、ホワイトマグノリア、日本語で銀厚朴ギンコウボクと呼ばれ、小振りの白い妖艶な花が特徴です。アジアの亜熱帯、熱帯地方原産で、精油は中国、インドで作られています。花と葉に香りが含まれ、リナロールという主成分が70~80%を占めながらも、数多くの微量成分によって、甘いフルーツやアルコールの様な大変ユニークなフルーティフローラル香を醸し出しています。多幸感や楽しいリラックス感をもたらし、大昔に流行った資生堂春のキャンペーンソング、”不思議のピーチパイ”が浮かんできそうな香りです。上等で高価な花の精油に対して、葉の精油はマグノリアの特徴は残しながらもより軽く手頃な価格でおすすめです。
使い方:ディフューザーに1〜2滴落として拡散させる。ボディオイルやマッサージオイルに他の精油とブレンドして使用する。
ネロリ 天使の香り 4/3/21
「天から香水をまいたかのように、高貴な香りが一面に漂います。柑橘の花が咲き始めたのです。」春から初夏にかけて真っ白い花が開く頃、オレンジ畑は香りの精に包まれます。
ビターオレンジ(和名ダイダイ)の花を水蒸気蒸留してネロリ油、溶剤抽出してオレンジブロッサムアブソリュートがとれます。エキゾチックで開放的、無邪気でかわいらしさもあるフルーティな甘さの花の香りは、きらきらと光に舞うエンジェルのようです。ビターオレンジの花の香りは、心の不安感や自己不信を穏やかに溶かし、明るく軽やかな気持ちを生み出します。大変高価な精油ですが、微量で効果を発揮し、香りの持続性も高く、また他の香りと融合しやすく、同時に香りの質を高め個性的な香りを創り出します。そのため香料としても大変貴重な香りです。蒸留でとれるオレンジフラワー水も昔からデザートやコーヒー、ハーブティーに加えるなど、美容や健康に愛用されてきました。
使い方:ディフューザーで拡散させる(精油1滴、あるいは度数の高いアルコール/ウオッカなどで精油を30〜50%にうすめたものを1〜2滴使用)、ボディオイルとして1〜2%に植物油でうすめたものを使用する。
「 」内は、趣味の園芸柑橘類より抜粋
ラバンディン 3/6/21
ラベンダーもいいけれど、快活さとリフレッシュ感があったらもっといい、と思うときラバンディンはおすすめです。フローラルで上品な真正ラベンダーと、ハーバルでカンファー様のスパイクラベンダーの自然交雑で生まれたラバンディンは両方の性質をもち、フローラル、ハーバル、スパイシーなラベンダーの香りです。育てやすく、収油率も高く、価格も低めで利用しやすい精油です。
夜使えばリフレッシュ感が一日の疲れを癒し、すっきりとした落ち着いた気持ちで眠りにつくことができるでしょう。朝使えばラバンディンのモーニングコールでさわやかに気を目覚めさせ、安定感のある元気な一日をスタートさせることができるでしょう。ユーカリの主成分シネオールや少量のカンファーを含むため、筋肉痛や風邪などにも向いています。
使い方:お風呂に数滴入れる、植物油と混ぜマッサージや患部の擦り込みに使う、ディフューザーで拡散させる。
注:なるべくオーガニックで良質のラバンディンをお選びください。参考のため植物学名を明記します。真正ラベンダー(Lavandula angustifolia)、スパイクラベンダー(Lavandula latifolia)、ラバンディン(Lavandula x intermadia)
ゼラニウム 2/6/21
2月は最も気温の下がる時期で、身体も冬疲れを感じる頃ではないでしょうか。今回は心身を元気にするゼラニウムをご紹介します。ゼラニウムの精油は観賞用のゼラニウムとは別種の植物から抽出します。テンジクアオイ属のペラゴニウム・グラベオレンズという植物です。ギザギザの切れ込みのある繊毛で覆われた葉に強い香りを含んでいます。その葉は昔から生傷や止血に使われてきました。また1800年代前半にはゼラニウムの本格的な蒸留が始まり、それ以来香水や香粧品の原料として幅広く使われ続けています。
濃厚なゼラニウム精油の香りは薄めること、拡散することでよりこころよい香りを放ちます。ローズ様の収斂的な、グリーン調の渋い香りは、神経と心身を引き締め、気の流出を防ぎまとめます。また気を足元に下げ安定感、現実感を与えます。
効能:心身強壮、癒傷、止血、収斂、鎮痛、皮膚感染症、末梢の血行促進、スキンケア
使い方:植物油でうすめボディオイルやマッサージオイルとして使う、ディフューザーで拡散させる
サンダルウッド・白檀 精神統一 1/1/2021
新年明けましておめでとうございます。昨年も香りのコラムをご覧いただきありがとうございました。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
木の香り、あたたかい木の香り、木の奥の世界に包まれるような香り。二十年、三十年を経たサンダルウッドに宿る香りは、深くまろやかで木の香りの中でも格別に上品です。樹の心材に含まれる香りの主成分はサンダルウッド特有の香気成分サンタロール、この成分は化学合成するのが大変難しいといわれ、それゆえに時代を経た現在でも大変貴重な香木です。「日本書紀」によれば天智天皇の時代670年頃に中国より伝わり、高貴な香木として仏像や仏具の材料として、また心を落ち着け邪気を払う香りはお香や宗教儀式にも使われてきました。原産地であるインド、そして中国では何千年ものあいだ香木、香材、薬材として使用されてきました。サンダルウッドの香りには男性ホルモンに似た成分が含まれているともいわれ、男性と相性の良い香りでもあります。ソフトで繊細でありながらも力強さのある香りは心を深く落ち着け、精神を統一させ、人間の可能性を高めます。一年が終わり新しい年を迎える特別な時間にサンダルウッドの香りを添えられてみてはいかがでしょうか。
カルダモンの種 バイタリティー 12/5/20
セクシーな香りカルダモン。インド原産のショウガ科の植物で、グアテマラやインドで多く栽培されています。グリーンの殻の中に入っている小さな種を潰すと強烈で鮮やかな香りが放たれます。大昔から香油、薫香、薬などに、消化、むくみ、不安症、媚薬等の原料として使われてきました。またスパイスとしてインドのカレーやチャイティー、北欧のデニッシュ、アラブ諸国のコーヒーなど食べることを通して心身に生気を与えてくれます。さて、いったん香り成分だけを取り出された精油の香りはというと、ちょっとオシャレでセクシーな、想像力をかきたてる複雑な香りです。どことなく女性の匂いを感じさせる、しかし男性的な香りです。同じ科のショウガの香りは肺から脳までピリッとした刺激が伝わり感覚器が冴えるのに対し、カルダモンは一気に下腹部へと伝わり安定感を与えます。そして生命の生まれる下腹部からバイタリティーを放出するエネルギーを生み出します。ベルガモット、イランイラン、スパイクナード、ジンジャー、シーダーウッドなどと合わせると香りに深みを与え素敵な香りが生まれます。使用法としては香油がおすすめです。お肌の乾燥も本格化していく季節、植物油をベースにカルダモンをブレンドしたボディオイルを楽しまれてはいかがでしょうか。
ジンジャーの香り 11/7/20
紅葉も過ぎ冬も間近ですね。皆さまお変わりありませんか。今回は馴染み深いジンジャーをご紹介します。
固くて、ぽってりとしたジンジャーは実は根茎(こんけい)と呼ばれる、土の中で生育する茎です。根茎は地表近くで成長、増殖し、そこから地上に葉が伸び、地下に根が伸びます。たっぷりと各種成分を蓄えたジンジャーの根茎は大昔から多くの地域で香辛料や生薬として利用されてきました。温暖な日本から熱帯のインド、アジア、アフリカ、中南米などでもさかんに栽培され、精油も抽出されています。ジンジャーの命である辛味成分や香気成分は主に皮の近くに存在しています。(ショウガは皮をむかずに使うと云われる所以です。)強烈で個性的なジンジャーの香りは単純なようで実は大変複雑で、100種類を超えるバラエティに富んだ芳香成分で構成されています。ブラックペパーのようなスパイシー感、レモングラスのようなレモン様の香り、松葉のようなすがすがしさ、ゼラニウムのようなローズ様収斂性のある香り、ターメリックのような温かい土の香り、ユーカリのような鼻につき通る香り、様々な香り成分が集合してできたジンジャーの香りは揮発性分子として私達の嗅覚や心身に、より繊細な形態で触れ吸収されていきます。感覚神経に気を送り活力を与え、マインドや心を滋養し強壮にします。植物油で薄めボディオイルやバスオイルとして、ティッシュなどに付ける、ディフューザーで拡散させるなど、力強いジンジャーの香りでこれからの寒い季節をどうぞお元気にお過ごしください。
青いジャーマンカモミル 10/3/20
別名ブルーカモミル、ハンガリアンカモミルとも呼ばれます。植物学名はMatricaria recutita、ハンガリー、ドイツ、ロシアなどが主な産地で、精油は深い青色をしているためそのような呼び名がつきました。前回ご紹介したローマンカモミル と香調が異なり、ローマンカモミルは拡散性が強くフルーティであるのに対し、ジャーマンカモミルは少し重く干し草のような、しかしハーバルで個性的な香りです。精油の青い色は、精油中に含まれるアズレンと呼ばれる物質のせいで、これは生の花の中には存在せず、乾燥、蒸留することによって生まれます。この美しいブルーの物質は抗炎症作用をもち、他にもビサボロールという抗炎症、鎮痙作用のある物質が含まれるため、ジャーマンカモミルは全体的に、抗炎症、鎮痙、鎮痛作用が期待できます。胃痛、筋肉・神経痛、生理痛に、また消化や肝臓の働きも助けます。ハーバルで重目の香りは気分も落ち着かせます。冷静なマインドと神経の落ち着き、体組織の抗炎症作用によって、身体を元気に健康に導く青い色の精油ジャーマンカモミルです。
使い方:5%位に植物油で希釈したものを思い当たる箇所にやさしくすり込むように塗られるとよいでしょう。お風呂に入れるのも大変リラックスできます。
注意:キク科アレルギーの方は注意をしてください。
ローマンカモミル フルーティーな香りでひと息 9/5/20
秋風の吹く季節になりました。皆様お元気にお過ごしでしたか? 猛暑と長いコロナ生活で、気付かぬうちに心身の疲れが溜まっているころではないでしょうか。ひと息つき、穏やかに疲れを流し、新しい秋のサイクルに移行したいものです。キク科のローマンカモミルは小さな白い花で、細い茎、細い葉、そして地面に這うような背の低いハーブの上を歩くと良い香りを放ち、踏まれてもしなやかで力強いハーブです。葉にはフルーティー、スイート、フローラル、ハーバルなとても軽やかでやさしい芳香があります。花と葉を蒸留して得られた精油もまた同様の素敵な香りです。疲れた胃やみぞおちに溜まった神経の緊張を緩め、力を抜きながら体全体を元気付けます。
効能:神経の緊張を緩める、健胃、鎮痛、抗炎症
使い方:植物油で1~5%に希釈したものを身体に塗る。特にみぞおち、胃、腹部、わき腹、肝臓・脾臓のある背部にやさしく擦り込む。
注意:キク科アレルギーの方は使用しない。
真夏の花 ラベンダー 8/1/20
暑い日が続いていますが、皆様お元気ですか。今年のNYの夏は湿度が高く身体も疲れやすいですね。気分転換を上手に図り心身共に元気に過ごしましょう。
真夏に鮮やかな青紫色の花を咲かせるラベンダーはまさに救世主。風に揺れる清楚でエレガントな姿と、すがすがしいハーブの香りは暑さで鈍った神経をリフレッシュさせ、心身を健康に保ちます。穏やかで有益な効果は皮膚疾患から健胃、頭痛、風邪、筋肉痛、精神安定など多方面に渡り、大変利用価値の高い植物です。Lavandula angustifoliaという植物学名のラベンダー精油をお使いください。
利用法:●一日の疲れをとり心穏やかな快眠のための夜の入浴に、2〜4滴の精油をバスタブの湯に入れかき混ぜ入浴する。●日中の気分転換に、ボールに好みの温度の水を少なめに入れ精油を一滴落として混ぜ、タオルを浸し良く絞る。額、目の上、首、腕など好きな所にゆっくりとあてる。すっきりしたい時は体を拭く。●ティッシュやタオルなどに一滴落とし軽く漂わせる。●ボディオイルやスキンケアに植物油と混ぜて使用する。●小さな切り傷、軽いやけど、虫さされ等に微量つける。
ローズ 7/4/20
初夏から夏へ。5月6月はローズの季節です。NYでも公園や街路に咲きほこるローズを見かけます。ローズは古代から美しさ、完璧さ、愛の象徴として多く語られてきました。しかしその割りには日常生活での存在感が薄く、美しさだけではないローズの価値が見逃されているようです。
普段見かける交配種の観賞用ローズとは別に、香り高いオールドローズと呼ばれる原種や原種に近いローズがまだ多く存在します。イラン、トルコ、ブルガリア、モロッコなどに多く自生、栽培されるダマスクローズ。花びらをティーやジャムに、蒸留をしてローズ水を作りデザートや料理、肌を引き締め美しくする天然の化粧水、また薬用にも使われます。中国ではメイクイ玫瑰と呼ばれる日本のハマナスと似たローズが上記同様使われ、ローズ花茶は肝臓の解毒、整胃腸、精神安定、美肌などの効能があります。加えてローズ花のフリッター、生の花をグラニュー糖とこねて寝かせて作るジャン、お酒や酢に漬けるなど多様です。チリのローズモスキータはローズヒップ、ローズヒップ種子油で有名です。ローズヒップ(実)はビタミンCに富み、ローズヒップ種子油は癒傷作用のある美容オイルです。
見て香って楽しみ、肌を美しくし、食して美と健康を増進するローズをどうぞお役立てになり、素敵な夏をお過ごし下さい。
ローレル・月桂樹 未来への香り 6/6/20
古代ギリシャではローレルの葉で作られた冠、月桂冠は達成、栄光、気高さの象徴とされ人々の頭を飾りました。芳香の強い枝葉は空気を清浄にし伝染病の感染から守り、また予言を授かるハーブとして儀式で焚かれました。年中枯れることのない艶のある濃い緑色の葉は平和と守護を象徴し、果実と葉は健康のハーブとして使われてきました。
ローレルのさわやかな芳香は、知性的で強く明るく、はるかな未来へのいざないを感じさせます。先の見えない時代に創造性、直感力、高いモラル、知性で新しいより良い未来を切り開き到達する、そんなエネルギーをもった香りです。
NYの木々も日毎に色濃くなり生命力にあふれてきました。どうぞ皆様お元気に初夏をお迎えくださいませ。
単調な日々に至極の香り ベルガモット 4/25/2020
オーデコロンとアールグレイ紅茶に欠かせないエッセンシャルオイル、ベルガモット。”Prince of Citrus”、と呼ばれ柑橘類の中では特別な存在です。すっぱくて食用には向かず、しかし果皮から生まれる精油は至極の香りです。ビターオレンジとレモンの交配種と云われ、幸運にも香りのサラブレッドが誕生したのです。他の柑橘類の爽やかな香りはリモネンという主成分と各種柑橘類の特徴を与える微量成分で構成されています。それに対しベルガモットはラベンダーの主成分と似ているのです。爽やかさ、軽やかさ、苦み、青み、洗練されたベルガモットの香りは、感覚や神経の停滞を散らし気分を明るく引き立てます。まさに”シトラスのプリンス”です。
使い方:ティッシュに付けて置いておく、バスルームのタオルなどに付ける、ディフューザーで拡散させる、お風呂に2〜3滴、紅茶ティスプーン3杯に一滴落としよく混ぜ分散させる。
良い香り、清潔な香りは心に生存への安心感を与えます。この状況下、免疫力を低下させないように運動、食事、睡眠などそれぞれに気をつけておられることと思います。過密したNYのアパートメントで多くの時間を過ごすなか、植物の清潔な芳香は同じ空間に居ながらにして、心安らぐ場所へと脳の認識を変えます。レモンやオレンジを切ったときのフレッシュな香り、コーヒーを淹れるときの香り、新鮮なローズマリーやタイムの香り、、、生命力を賦活させる良い香りですね。植物中の芳香物質は、穏やかな各種の活性成分を含むため精油の種類によって抗菌、抗感染、リフレッシュ、リラックス作用も期待できます。長い間使わずにしまい込んでいた精油など利用するのに良い機会です。どうぞ楽しく有効にご利用され、心身の自己健康管理にお役立てください。
精油の利用(以下はおすすめですがお好みの精油をどうぞ)
●拭き掃除:各種精油
●消毒用のアルコール溶液:接触するものの消毒用にはティトリーなど
●液体ソープ:手洗い用にはティトリー, ティトリーとラベンダーのブレンドなど
●室内に拡散:ユーカリ系、柑橘系、ラベンダー・ローズマリー・カモミルなどハーブ系、パイン・シーダーなど木系
●外出時マスクやスカーフなどに:ユーカリ系
●うがい:ティトリー、ニアウリなど
精油の抗感染力 3/6/2020
世の中が大変混乱しておりますが、お元気にお過ごしでしょうか。
新型コロナウイルスの広がりは驚異的で不気味でもあります。一日も早く健全な状況になるよう、そして皆様の心身のご健康を祈っております。
今回あらためて精油の抗感染力について見直してみました。ご参考になれば幸いです。
微生物や感染症と言えば、いつも井上重治氏の本を読み返します。東大医学部薬学科を卒業し、明治製菓で抗生物質の研究開発を40年、微生物化学を専門とされ晩年は抗菌アロマセラピーの研究にも従事されました。著書「生きる力 自然から学ぶ健康法」は健康を主題にして、微生物と精油と体の仕組みがどのようにかかわっているかについて基本的な知識と知見をまとめられたものです。風邪、インフルエンザ、上気道感染、ウイルス感染について述べられている箇所から部分的に少し抜粋しました。
”ほかの抗菌剤とは異なる精油の特徴に揮発して蒸気になっても抗菌力を示すことがあります。この性質は上気道感染の予防に役立ちます。これが精油が昔から風邪を中心とした上気道感染の予防に用いられてきた理由でもあります” p58
”ヘルペスウイルスやインフルエンザウイルスに対する基礎的研究から、精油の抗ウイルス効果は基本的には感染の拡大を防ぐ予防的な用法が有用に思われます。ーー 空中を浮遊するウイルス粒子を気体状態の精油の分子で直接不活性化することが期待できるからです。具体的に精油にどの程度の予防効果があるかは今後の課題です” p83
”抗菌剤に比べれば精油の抗菌力は強くないので、治療よりはむしろ予防に適しています。予防目的に使用する場合には、強い抗菌力はむしろ使いにくく、使用量が少ないと無効で、用量が多すぎると副作用が出易くなります。これに対して、精油のように弱い抗菌剤は許容範囲がひろいので、安心して使うことができます” p57
このように精油の利用は感染予防策のひとつの方法として考えられることから、風邪やインフルエンザの予防に使いやすい精油を選び、適した使用法別に分けてみました。
◾︎皮膚、粘膜など表面上の抗菌に適した精油
精油:Tea Tree, Niaouli
使用法:うがい(塩水によく混ぜる)、手・顔・体洗い(液体石鹸に混ぜる)
◾︎上気道にすばやく拡散する精油
精油:Eucalyptus Globulus, Eucalyptus Radiata, Cajeput, Myrtle, Niaouli
使用法:吸入(手のひらに一滴とり軽くこすって深く吸入、ティッシュにつけて吸入)
*喘息のある場合は、蒸気吸入はすすめません。
◾︎空中に拡散させるのに適した精油
精油:Eucalyptus Globulus, Eucalyptus Radiata, Eucalyptus Polybracta, Cajeput, Myrtle, Pine, Lemon
使用法:ディフューザー
PROTECT BLEND
各精油の特性を見直しながら、抗感染ブレンド-PROTECT-を制作しました。
上気道の抗感染を目的とし、
1、すばやく上気道に入っていくこと、
2、香りがある程度持続すること、
3、気持ち良く嗅げること、
4、抗菌力の強いタイムやクローブをはじめ他の特性をもった精油も組み入れたこと、
などが特徴です。
Ingredients: Eucalyptus Globulus, Tea tree wild(o), Eucalyptus Radiata(o), Eucalyptus Blue Mallee(o), Cajeput, Niaouli(o), Cypress wild, Saro wild, Rosemary(o), Sweet Fennel, Clove(o), Thyme, (o):organic
$8/5ml, $15/10ml, $23/15ml
季節はめぐり、もう春ですね。
どうぞお身体ご自愛され、お元気にお過ごしください!
抗感染 ユーカリ・ラディアタ 2/29/2020
暖冬、新型コロナウイルスなど不安材料の多い世の中ですが、皆様お元気にお過ごしでしょうか。新たな問題に直面すると戸惑いながらも、生きている限り人間としてあらゆる状況に対処して行かなくてはなりません。各自新しい視点と処世術を持って日々つつがなく過ごし、乗り切って行かれることを願っております。今回の新型コロナウイルスはじわじわと近付き、一気に拡散し、しつこく居着き油断ならないウイルスのようです。そこで、あらためて精油の抗感染作用(新型コロナではなく一般的な)を見直してみました。数多くリストされている抗菌、抗ウイルス、抗感染作用をもつ精油の中で、空気中に素早く拡散し、鼻や口などの開口部から気道・呼吸器系に入っていく精油の代表格として、1,8-cineoleという成分を多く含む精油のグループがあります。中でもユーカリ・ラディアタ種は比較的香りも使い易く、安価で入手しやすい優秀な精油です。また一方で、うがいや手洗いによる皮膚や粘膜の抗菌にはティツリーがおすすめです。
使い方:ユーカリラディアタ精油を市販のウイッチヘーゼル溶液で約30%に希釈しマスクやスカーフなどに一吹きする(小さなガラスのスプレーボトルに入れ、使用前に必ず良く振る)。ティッシュに一滴つけて嗅ぐ。ディフューザーで30分から1時間位部屋に拡散させる。
赤いつぼみ クローブ 1/25/2020
和名はチョウジ丁子。インドネシア、マダガスカル島、西インド諸島など熱帯多雨地域に生育し、高いもので20mにもなる高木常緑樹です。艶のある立派な濃緑色の葉に深紅色のつぼみがよく映え、木全体が芳香を放ちます。特に赤いつぼみがもっとも香りが強く、そのつぼみを乾燥して使います。小さな釘のような形をしたクローブはそのままの形で、または粉末にして、あるいは精油を使用しますが、実は意外と日常的に使っている身近なスパイスなのです。
お正月に欠かせないお屠蘇はクローブがよく香ります。冬に美味しいチャイティー、カレー、健胃剤(太田胃散など多数の胃薬の原料)、歯痛の鎮痛、香料として線香、ねり香、匂い袋、香水、化粧品、食品フレーバー、リキュール、タバコ、各種料理、菓子類等々、、、、少しのクローブで甘く深みのある香りを醸し出します。その香りの効能ゆえに、花開くことを奪われながらも、力強く生き続けるチョウジの木です。そして考え込むよりまず行動、一歩前進というのがクローブの香りの導くエネルギーです。
効能:加温、殺菌、防腐、鎮痛、抗炎症、抗感染、抗酸化、健胃、食欲増進
使い方:精油は大変強く、皮膚刺激性、麻酔性等あるため1%以下にうすめ、注意して使用。
ジャスミン 尊厳 12/21/2019
白くて小さなジャスミンの花は可愛らしい甘い、いいにおいがします。天然香料のジャスミンアブソリュートは堂々とした豊かな高級感ある香りです。生のジャスミン花の香りを吸わせた白茶のジャスミンティーは清楚であたたかく気品があります。どのジャスミンの香りも、その香りにふれたとたん、きっとあなた自身にインフューズされることでしょう。
2020年も皆様にとって健康でハッピーな良いお年でありますように!
新年あけましておめでとうございます。
昨年も香りのコラムをご覧いただきありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
個々人の心は、どこにいても、どんな時も、あたたかく豊かであることを願って、新しい年を迎えるにあたり、ジャスミンの香りを選びました。
白くて小さなジャスミンの花は可愛らしい甘い、いいにおいがします。天然香料のジャスミンアブソリュートは堂々とした豊かな高級感ある香りです。生のジャスミン花の香りを吸わせた白茶のジャスミンティーは清楚であたたかく気品があります。どのジャスミンの香りも、その香りにふれたとたん、きっとあなた自身にインフューズされることでしょう。
2020年も皆様にとって健康でハッピーな良いお年でありますように!
スコッチパイン 活力、温める、殺菌 11/23/2019
和名はヨーロッパ赤松。北ヨーロッパ、ロシア原産で樹高40mにも成長する常
緑高木樹です。北方の高山地域を好み、少ない日射量や寒さをものともせず生き抜いています。針葉の緑と爽やかな香りはいつも私たちに活力と温もりを与え続け、人々は大昔からこの樹の各部、樹皮、樹脂、芽、枝、球果、針葉、実、おがくずを病気の治療に、また長く伸びる幹は木材や帆船のマストに使ってきました。これからの寒い季節、風邪、気管支炎、リウマチ、神経痛、神経疲労などの症状にパインのすがすがしい香りと温めるパワーは最適です。精油は針葉を水蒸気蒸留して採ります。
香り:針葉樹の清々しさ、木の甘さと苦味のある香りは肺に染み入るようです。
性質と効能:空気の浄化。肺や気管支の消炎、殺菌、去痰、鎮痛。温める作用。筋肉のリラックス。リウマチ、神経痛。神経系を強壮にし神経疲労や神経衰弱を回復。
使い方:植物油と混ぜて部分的な擦り込み剤、マッサージオイル、バスオイルとして使う。部屋に蒸散させる。
ワイルドキャロットシード 滋養、解毒、支える 10/26/2019
野良にんじんの種の香り?セリ科の植物、ニンジン、パセリ、フェネル、アニス、コリアンダー、キャラウェイなど、どれも全草に香りがありますが、特に種に強い香りを含んでいます。これらの種は薬味、スパイスとして使われ、消化を助け、お腹のガスを出し、利尿を促す作用があります。ニンジンの種の香りは、アロマティックないい香りというより、滋養的な匂いでしょうか。夏に白やうすいピンクの花をつけ秋の種の時期になると、花はくるりと内側を向きネットのように編み込まれたボールを作り、その中に沢山の種が入っています。色気や香りなどふりまかず、風に吹かれながら群生してたたずむその姿はとてもカッコイイのです。
香り:土っぽい、ゴボウのような、ガスのような強い匂いが鼻をつき、その後黒砂糖のような甘さとスパイシーな苦さが残る。
効能:肝臓の働きを助け、解毒機能を高め、利尿を促し、心身を浄化する。皮膚組織に活力を与え、元気のない肌を引き締める。地に足をつけ、ふらつく心身を支え、現実を生きることを助ける。
使い方:植物油と混ぜて、全身あるいは部分的なボディオイル、またバスオイルとして使う。スキンケアには小さじ一杯のベースに一滴を混ぜる。
小さな葉と小さなピンクの花を咲かせるこの香り高いハーブは、温暖で湿度の低い気候を好みます。ローズマリーやラベンダー、セージ、ミントなどど同じ植物の科に属し、その個性的な香りは温かく、甘く、苦く、女性的なやさしさを感じさせます。そして、どこか未知の感性の領域に入っていくような、脳を心地よくさせるちょっと不思議な香りでもあります。
性質と効能:副交感神経機能を促進して血管を拡張させるため、身体を温め、神経や筋肉、関節をリラックスさせ、神経の鎮静剤、消化促進剤として有能です。
使い方:植物油と混ぜてマッサージオイルやボディオイルとして、おふろに数滴垂らしてバスオイルとして。
フランキンセンス 祈りと浄化 9/7/2019
フランキンセンス木の樹皮を切り開きにじみ出てくる乳白色の樹脂液は、その姿からフランキンセンスの「涙」と表現されます。乳白色の樹脂液はやがて固まり琥珀色へと変化します。和名は乳香(ニュウコウ)と呼ばれ、アラビア半島南部やアフリカ北東部 – オマーン、イエメン、ソマリア、エチオピアなどが主な産地です。
樹脂が採れるようになるまで樹齢8〜10年の長い年月を要します。樹の内部で生成物が化学変化を続けながら成熟し生まれた香は、人間の歴史と共に数千年前から香料、薬剤として人々に好まれ続けてきました。
祈りのあるところには常に乳香の煙が立ち上り、乳香を焚くことは祈りの象徴であり、神とのつながりであり、祈りを神に届けることであり、同時に場を清め、悪霊を追い払い、心身をはらい清め、そして良き香りを放つ生き方をすることを示す意味も込められていました。
治癒薬としての記述も見られ、乳香を焚いて家内を消毒する香煙の利用、去痰薬、気管支炎への効能、不眠症や健忘症など神経性の病気の治癒、擦り傷や止血など皮膚の損傷の治癒、筋肉痛や関節痛などの鎮痛消炎薬としての効果など多数述べられています。
開放的だった夏から心身の引き締まる秋への移行に、フランキンセンスの崇高な香りで黙想をし、気持ちを整え、 どうぞ新しい季節を元気にお迎えくださいませ。
草の香りで虫除け シトロネラ 8/3/2019
暑中お見舞い申し上げます。猛暑も過ぎ去り夏も後半に入ってまいりました。皆様お元気にお過ごしでしょうか。今回は夏のアウトドアには欠かせない”虫除け”対策のための精油、シトロネラをご紹介します。庭で焚く虫除けキャンドルの匂い、といえばわかりやすいでしょう。レモングラスと良く似たさわやかな香りのイネ科に属する香草でインドネシアが一大産地です。米国のEPA(環境保護庁)によって1948年に植物性の昆虫忌避剤として登録されました。キャンドル以外には薄めて肌や服につける利用法がありますが、難点は香りという揮発性の性質のため効果が長時間継続しずらく、2〜3時間おきに付ける必要があること、肌の弱い人には皮膚刺激が起こるかもしれない点です。調合のポイントとして粘度の高い植物油や揮発速度の緩やかな精油と合わせると良いでしょう。無香料の液体ソープやシャンプーに入れて使うこともできます。他の精油ではレモンユーカリ、キャットニップ、ゼラニウムなども効果的です。
また虫除け以外にも、抗菌、抗真菌、抗炎症、デオドラント作用があるため、水虫や汗をかきやすい足のための足用ローションや足浴などにも最適です。さわやかな香りで気分もリフレッシュし、疲れも癒されます。
香り:青々しいレモン様の草の匂い
性質と効能:蚊除け、虫除け、抗菌、抗真菌、殺菌、抗炎症、デオドラント作用
使い方:大さじ1杯15mlの植物油に5滴入れ肌につける。筋肉痛のためのマッサージオイルとしても使える。足浴にはバケツに湯を入れ精油を数滴落としよくかき混ぜ足をつける。
数ある精油の中でもティトリーは一般に最も普及している精油のひとつです。それはティトリーの広範囲にわたる抗菌作用、使い易さ、入手のし易さのためでしょう。今でも原産地オーストラリアのBungawalbyn国立公園には何千年も絶えることなく生茂るティトリーの林があります。原住民のアボリジニはその葉を風邪や咳、皮膚の創傷、感染症などに使用してきました。
地球上の生き物は微生物との共生によって命を繋いできました。ヒトの体表、体内にも無数の常在菌が棲みつき私達の健康を維持しています。精油の抗菌作用は、常在菌フローラを乱さずに感染症やその予防に効果を発揮します。ティトリーの得意とする広範囲で強力な抗菌力は風邪、インフルエンザ、気管支系の炎症、歯周病、口臭、カンジダ症、膀胱炎、ヘルペス、水虫、イボ、ニキビ、火傷、創傷などの症状を改善し、同時に免疫力を高め神経を安定させます。まさに家庭の薬箱です。
香り:苦みのあるピリッとした樟脳様の衛生的な香り。
性質と効能:殺菌消毒、抗菌、抗真菌、抗ウイルス、抗感染、抗炎症、免疫強壮、神経強壮、癒傷作用。
使い方:うがい(気管支系や口腔の殺菌)には約50mlの水に1滴をよく攪拌分散させて使う。カンジタ、膀胱炎には約1Lの水に2〜3滴をよく攪拌分散させて患部を洗浄する。水虫、イボにはピンポイントで精油をつける。
初夏の香りスイートバジル 6/1/2019

昔は夏の知らせのように、暑くなるとバジルが店先に並び始めたものですが、近年は年中見かけるようになりました。さわやかで強烈なバジルの匂いや料理は、暑さで疲れた身体、神経、そして胃腸を快く刺激し心身共にリフレッシュされ元気になります。
バジルの精油は夏のはじめ、花が開く直前の花と葉を摘み、蒸留して抽出します。現在エジプトが一大産地です。生
のバジルの香りと比べるとフレッシュ感は減り、アニスやクローブのような甘さをより感じるようになります。頭脳労働で疲れた頭、精神的な疲労感など疲れた神経を深くリラックスさせ休めることで疲労を回復に向かわせます。また気高く個性的な香りは、精神的な強さを与えます。筋肉、特に平滑筋(内臓筋)をリラックスさせる効果もあり消化運動を助けます。
性質と効能:神経疲労回復、頭部機能疲労回復、筋肉の鎮痙作用による消化促進、筋肉のリラックス、抗不安作用
使い方:香りが強いため常に少な目に使用すること。バジルの中でもスイートバジル(Ocimum basilicum)リナロールタイプをお使いください。植物油で薄め部分的なマッサージオイルとして使う。ディフューザーで焚く。ティッシュなどに1〜2滴つけて置いておく。
純潔の美と愛の象徴 マートル 5/4/2019
さわやかな新緑の季節を迎えております。
いつまでもこの空気の中に浸っていたいものです。
今回は爽やかな季節に似合うマートルをご紹介します。
地中海沿岸の日当たり良く水はけの良い暖かい場所を好む低木常緑
樹です。
光沢のある濃緑色の小

さな葉と白い花に強い芳香があります。
白い梅の花に似ているため、日本では銀梅花/ギンバイカ、
祝の木/イワイノキと呼ばれています。
ギリシャ神話では純潔の美と愛を象徴し、
結婚式の花輪に使われてきました。
エンジェルズウオーターはマートルの葉と花を主材料にした16世
紀の有名な化粧水です。
ユーカリと同じ科に属するマートルはマイルドなユーカリ様の清涼
感を持ちながらも、緑の葉のグリーンハーバルな香り、
奥に秘めたフローラルなタッチが特徴で、
軽やかさとエレガントさを感じさせます。
香り:フレッシュな葉と小枝を蒸留。グリーンハーバル、軽いカンファー様、ライトフローラル。
性質と効能:爽やかな香りは気分を暗やみから明るさへと引き上げ、依存症や不安定な感情を脱したいときに役立つ貴重な香りです。身体には、気管支炎、咳、花粉症など呼吸器系の症状に、また皮膚の収斂、殺菌に適しています。
使い方:ディフューザーで焚く、
ティッシュやコットンボールに1〜2滴落として置いておく。
大さじ1杯のホホバオイルに3滴混ぜスキンケアオイルとして使う
。
春の陽気 ペティグレン 4/6/2019
Petit-grain, 小さな粒。若くて青い小さな果実に由来する名前ですが、
現在は果実ではなく主にビターオレンジの葉、
小枝を水蒸気蒸留した精油をペティグレンと呼んでいます。
ビターオレンジの花の香りはローズやジャスミンと並び、
香水に欠かせない香りです。
ペティグレンもオレンジの花様の香りを持ちながらも、
葉っぱのフレッシュ感がトップに香り、
若草の萌えたつ陽春にぴったりの可愛らしい素敵な香りです。
心も体も解放され明るい気分になります。
ビターオレン

ジの葉は昔から煎剤として、鎮痛、鎮痙、神経過敏、
不安症、不眠、消化促進などに煎じて飲まれてきました。
香り:フレッシュ、グリーン、ウッディ、フローラル
性質と効能:主成分はラベンダーと同じリナリルアセテートとリナロールですが、オレンジ花様の成分も入っているため、より不安を和らげます。穏やかな皮膚の殺菌作用でスキンケアにも使いやすく、また筋肉をリラックスさせるためマッサージオイルにも適しています。
使い方:ティッシュなどに1〜2滴落として置いておくだけでも良く香ります。ディフューザーで拡散させる。植物油と混ぜてマッサージオイルやバスオイルとして使う。
スイートフェネルの種 消化、痩身、エストロゲン 3/2/2019
フェネルの和名は茴香/ウイキョウ、セリ科に属しパセリ、
アニス、キャロット、セロリ、ディル、コリアンダー、
キャラウェイ、セリ、ミツバなど同じ科の仲間です。食用、香草、
消化を促す薬草として似たような特性を持っています。
フェネルは地中海沿岸が原産とされ昔から食用や薬用に利用されて
きました。細くて長い茎と、
その先端に傘のように集まって咲く小さな花の姿が特徴的です。
種を水蒸気蒸留して得られた精油はインテンスな薬っぽい甘さをも
ち、主に食品フレーバー、薬剤

(
太田胃散をはじめとする数多くの胃腸薬の原料)、練り歯磨き、
お菓子、リキュール(ペルノー、パスティス)
などに用いられています。
フレグランスとしても個性的な効果を生み出す素材として使われま
す。
香り:アニスやリコリスとよく似た独特の強い甘さがある。軽いトップノートも持ち合わせているため甘さがアルコールのように鼻に入ってくる。
性質と効能:停滞しているものを動かし発散させる性質がある。駆風(お腹のガスを出す)、利尿、去痰、鎮咳、消化促進、
アルコールの下毒を助ける、エストロゲン(女性ホルモン)様の働きがあるため生理不順、生理痛、更年期障害に。余分な体液や脂肪を排出する働きや、食欲を抑える性質から痩身にも利用されてきました。
使い方:植物油小さじ1杯に1滴まぜ、部分的にマッサージをして擦り込む。
注意:妊婦、授乳中、子供、てんかん症の方は注意をして使う、あるいは使用を避ける。
軽快な香り、ピンクペパー 2/2/2019

青いジュニパーベリー に続き、今月はピンクのベリー、「ピンクペパー」をご紹介します。 ピンクペパーコーン、ペルビアンペパーとも呼ばれお料理の風味付けにも使われます。植物学名はSchinus molle、南米北部のアンデス山脈沿いの砂漠地帯が原産の木で、現在では世界各地に生育しています。葉、樹皮、花、実に香りがあり、精油はピンクがかったルビー色の実からとります。軽快でモダン、ユニセックス、都会的、楽しい、そんな言葉を連想する香りは香水原料としても近年脚光を浴び、エスティローダーのPleasuresをはじめとする多くの香水に使われています。アロマセラピーで使う精油として、これから認知度の上がる精油でしょう。
香り:ブラックペパーをもっと軽く、フローラル、フルーティーにしたような香り。
性質と効能:抗菌、鎮痛、抗炎症、血行促進作用、筋肉痛、関節痛など。気分を明るく快活にする。
使い方:色んな香りと相性が良く少量使うことで香りを引き立てます。ボディオイルとして30mlの植物油に7〜10滴位、部分的なマッサージオイルとして大さじ1杯の植物油に5滴位、服の端などに付けてみる。少な目を心がけて使いましょう。
ジュニパーベリー 新年に向けて心身の浄化 1/1/2019

新年あけましておめでとうございます。昨年も香りのコラムをご覧いただきありがとうございました。本年も植物の香りをお届けしてまいります。どうぞ宜しくお願い申し上げます
ヒノキ科の低木ジュニパー(西洋ネズ)になる小さな青い実、ジュニパーベリー。有名なお酒ジンの香りの主役です。17世紀オランダの医師が熱病の患者を救おうと、利尿作用のあるジュニパーの実で薬酒を作ったのがジンのはじまりと言われています。大昔から、小枝を焚いて空気と心身の浄化、実を煎じて利尿、発汗に使われてきました。西洋では肉料理のスパイスとしても使われています。精油は主に北イタリアから東欧、バルカン半島で作られています。男性的な香水の原料として貴重な香料です。
香り:爽やかで軽い木の香りのベースの中に、実の甘く、水っぽい、少し苦い、そしてペッパー様のスパイシーさもあるこころよい香りです。
性質と効能:利尿、発汗、駆風、浄化作用。体を温め体液の循環を促す。
使い方:植物油と混ぜてお風呂、マッサージ、ボディオイルとして使う。ティッシュや香水テスター紙などに付けて香りを嗅ぐ。ディフューザーで拡散させる。
浄化のために:鼻からジュニパーの香りが入り込み、心と身体が浄化されていくのをイメージしましょう。一滴手にとり、頭から足まで(服を着たまま)邪気を払いましょう。
心身共に健康な良い一年でありますように 。
風邪の季節に、ニアウリ 12/1/2018
ユーカリやティーツリーほど有名ではありませんが、実は風邪かなと思ったときに一番に手に取る大変頼りになる精油です。ユーカリと同じ植物科に属する繁殖力の強い常緑樹で、原産はニューカレドニア、オーストラリア、マダガスカル島などです。ニューカレドニアでは貴重な民間療法薬として長く使われてきました。フランス領だったため、フランスでは早くからニアウリの精油を精留したゴメノールを輸入し、薬の原料として使ってきました。ニアウリの精油は香料としてではなく、薬の原料として製造されてきたのです。
香り:ユーカリよりもスースー感は穏やかで少し甘い。くせのある特有のにおいを心地良く感じる人も入れば、苦手な人もいます。 薬をイメージする匂いです。
効能:抗感染、抗炎症、殺菌、鎮痛作用、風邪、インフルエンザ、気管支炎、咳、喉の痛み、気管支系アレルギー、リウマチ、関節炎、口腔内殺菌、風邪の予防。
使い方:手に一滴とり、軽く擦り合わせて吸入、お風呂に入れる、植物油と混ぜ症状のある場所にすりこむ、ディフューザーで焚く。
さわやかな木の香り サイプレス 11/3/2018

ゴッホの絵にも登場し、
地中海沿岸の風景にアクセントを与えている西洋糸杉がこのサイプ
レスです。
ヒノキ科に属する針葉常緑樹でイランには樹齢4000年と言われ
るサイプレスが存在するそうです。
円錐形をした格好の良い樹は横には広がらず、
縦に縦に成長し樹高40mにも達します。
香り:さわやかな木の香り、です。精油は葉と小枝を蒸留して得られ、針葉樹のさわやかな香りから徐々に収斂性のある甘い木の香りへと続き、気持ちの落ち着く素敵な香りです。秋から冬に向かうこの季節、お部屋で香らせてみてはいかがでしょうか。
性質と効能:広がらない木の形と対応するように組織の収斂作用に優れ結合を促します。静脈や毛細血管の強壮作用、デオドラント、足の制汗作用、抗感染作用、気管支系の神経を鎮静し咳を緩和。
使い方:ディフーザーで拡散させる、ティッシュに1、2滴垂らし近くにおいておく。マッサージオイル、ボディオイルとして植物油大さじ1杯15mlに3〜5滴ほど混ぜて使う、バスオイルとして植物油小さじ一杯5mlに5滴ほど混ぜて使う。
ハーブの王者 ローズマリー 10/6/2018
地中海原産のローズマリーは、ふりそそぐ太陽と海がよく似合う常緑低木林のハーブです。エレガントな緑銀色の針状葉が密生して生い茂る姿は勇敢で野生的です。観賞、料理、薬草として比類ない存在感のあるローズマリーはハーブの王者と言われています。そのローズマリーから蒸留して得られる精油は人気の高い精油のひとつです。産地により香りや成分が異なり、また偽和されやすく品質に差があるため良質の精油に出会うことが重要です。香りの魅力をストレートに感じさせてくれるクリーンで雑味のないローズマリーの精油は瞬時に神経、頭脳、気分を明るくするパワフルな香りです。
香り:脳の奥からお腹の底まで一気に届き渡る強烈な香りは、突き抜けるような清涼感と辛味、樟脳的な強さ、爽やかでウッディな松の葉のような香りが特徴です。
性質と効能:頭脳の刺激強壮、神経の活性強化、疲労回復、鎮痛、抗うつ、筋肉痛、関節痛、頭皮の活性化
使い方:植物油小さじ1(5ml)に3〜5滴混ぜて箇所に擦り込む、ティッシュなどに1滴付け香りを嗅ぐ、ディフューザーで拡散させる、植物油などで希釈しお風呂に入れる。
注意:乳幼児や子供には使わない。妊娠中、授乳中は使わない、或いは注意をして使う。てんかん症、発熱時は使わない。高血圧症には注意をして使う、或いは使わない。
ローズの露 ローズハイドロソル 9/1/2018
さわやかな秋の風が吹き始めました。季節の変わり目には体調がく
ずれやすくなりますが、

皆様お元気にお過ごしでしょうか。今回は
ローズ水をご紹介します。ローズ水は古代から世界各地で料理、薬
用、儀式などに珍重されてきました。オールドローズの仲間、ダマ
スクローズの摘みたての花を蒸留して作られたローズ水は大変かぐ
わしく、ローズのみずみずしさを感じます。夏の暑さで疲れた身体
や肌をやさしく冷んやりと包み、心身の秋への移行を手伝ってくれ
ます。秋の風とローズの露に包まれながらどうぞ新しい季節を心地
よくお迎えください。
香り:蒸留によって自然なかたちで水に分散したローズの香りは、凝縮された揮発性のパワフルな精油の香りとは違い、穏やかでみずみずしく、ハニー様の上品なローズ香を感じさせてくれます。
性質と効能:抗不安作用、抗うつ、女性ホルモンの調節、内分泌や自律神経のバランス、浄化、スキンケア。
使い方:手に取って肌(顔、身体)につける、スプレーする。水、ティー、ミルクなどの飲み物に数滴落としたり、デザート等に加える。
注意:オーガニックのローズ水(ローズハイドロソル)がおすすめです。
全てを癒すハーブ ヤロウ/西洋のこぎり草 8/4/2018

暑い日が続いていますが、皆様いかがお過ごしですか?先日一年振
りにヤロウの蒸留を試みました。写真は青い精油が浮かんだヤロウ
の蒸留水です。アズレンという成分が蒸留により生成され、インク
のように分散、浮遊しています。アズレンは抗炎症作用のある貴重
な成分です。ヤロウはキク科に属しカモミルと親類です。
葉の形がギザギザしていることから西洋のこぎり草と呼ばれていま
す。背丈1m位に成長し、白からうすいピンクの小さな花を傘のよ
うに咲かせます。その色気のない姿はワイルドで力強くとても素敵
です。昔からキュアオール、全てを癒すハーブとして知られ、
止血作用に優れ傷の特効薬として使われてきました。
香り:精油はカンファー様のクールで爽やかな香りが最初に鼻に入り、その後カモミル、セージ、ヨモギを合わせたような強いハーバルな匂いが残ります。
性質と効能:殺菌消毒、抗炎症、止血、収斂、浄化作用、神経疲労、生理不順、傷、打ち身、青あざ。
使い方:蒸留水は日焼け後の肌、日々のスキンケアに適しています。精油は2%以下に植物油で薄めて局部的に必要な箇所に塗る。
注意:妊娠中、授乳中は使用を控え、乳幼児には使用しない。
グレープフルーツ 7/7/2018
夏の朝食に爽やかさを添えるグレープフルーツ。大きくてずっしりとしたグレープフルーツを半分に切るとキラキラとしたピンク色のジューシーな果肉が目の前に現れ、爽やかな香りに魅かれてひと口、そしてまたひと口。。。シトラスフルーツの中では歴史が浅く、オレンジとポメロの自然交配種と言われています。18世紀後半にカリブ海のバルバドスで生まれ、その後フロリダで栽培が始まり、以来米国は一大生産地です。ホワイトからピンク、ルビーレッドまで色と味の幅があるのも特徴です
香り:軽い甘みと酸味は他のシトラスに比べるとマイルドで、爽やかなほろ苦さがデリケートなニュアンスを与えています。ホワイトの方が甘みが少なくよりシャープな苦さと軽快さ、ピンクやレッドの方がよりスイートで豊潤です。ウッディなグレープフルーツ様の香りをもったヌートカトンという香りの成分がこのシトラスフルーツに確固たる存在感を与えています。
性質と効能:爽やかな苦味のある香りを嗅ぐと、身体の中で花火がパチパチとちるように神経をリコネクトさせ本来の明晰さが蘇ってきます。イライラ気分や神経の疲労回復に良いでしょう。リンパの働きを促し、余分な水分の排泄と脂肪の分解を助けます。肝臓の熱を冷まし働きを整えます。
使い方:ディフューザーで拡散させる、液体ハンドソープ(無臭)などに加えて使う、大さじ一杯のホホバオイルに5滴加えボディオイルやマッサージオイルとして使う、ペパーミントやラベンダーのタッチもおすすめです。
注意:未希釈で皮膚に使わない。皮膚に塗った後日光に当たらない。
初夏から夏にかけて一気に大きな茂みをつくるメリッサ。風になびく細い茎、うすい葉っぱ、日本のシソとよく似た容姿とリフレッシングな強い匂いをもっています。レモンバームとも呼ばれ、ピリッと爽やかなレモン様の香りが特徴です。メリッサ・オフィシナリスという植物学名は、この植物がその昔からオフィシャルに薬草として認められていたことを表しています。
香り:苦さ、甘さ、青くささがまじったレモニーなハーブの香り。生の葉っぱのシャープでみずみずしいフレッシュさは精油には欠けてしまいますが、レモン様のトップノートをもった精油の中では、複雑なニュアンスがあり高貴さを感じさせてくれる香りです。
性質と効能:「生命の霊薬」と呼ばれているメリッサは、余計な力を抜き、気を開放させる不思議な力があります。心と心臓を穏やかにする、スムースなぜん動運動を助ける、月経前緊張をやわらげる、頭痛の緩和など神経系をリラックスさせることで各器官の機能を整えるよう働きます。神経緩和・強壮、抗うつ、鎮痙、弛緩、消化促進作用。
使い方:メリッサの精油はローズのように大変高価です。おすすめは芳香蒸留水を利用することです。ミストボトルからそのまま振りかけたり、グラスに水を半分くらい入れ3〜4プッシュし香りを感じながら飲みます。精油をマッサージやボディオイルに使う場合大さじ1杯約15mlの植物油に1〜2滴混ぜます。
注意:精油を皮膚に使用する場合1〜2%以下に薄めること。
怒りの緩和 イランイランの花 5/5/2018
春は生命が息吹く季節。新芽、新緑、咲きほこる花々。昆虫たちは花々の発散させる香りや色形に引き寄せられ受粉を手伝います。甘くうっとりする花の香りは魅力的であると同時に、植物自身が生き抜くための強い生命力に満ちています。今回は「花の中の花」と呼ばれているイランイランをご紹介します。インドネシアやマダガスカル島などの熱帯地方に育つ樹高20mに達する高木の常緑樹です。年間を通して開花し、黄色く大きな細長い花が枝からしなやかに垂れるように咲きます。陶酔的な香りは香水の重要な原料です。
香り:甘美な心地良いフローラルな香り。しかし精油のボトルから嗅ぐ香りは強すぎて決して良い香りとは言えません。エクストラ、No.1~3、コンプリートなど何段階にもグレードがあるため高品質の精油を選ぶことが大切です。適度な濃さに薄めることによりイランイランの良い香りは生まれます。
性質と効能:抗うつ、無気力、心配性、抑圧された感情、欲求不満から生じる怒りの緩和。生命力賦活、第2チャクラのバランス。
使い方:ボディオイルとして大さじ1杯(15ml)の植物油に3〜4滴。植物油で約30%に薄めた精油をティッシュや香水テスター紙につけて置いておく、香油として使う、数滴お風呂に入れる。
達成のシンボル ローレル 4/7/2018

料理用のハーブ、”ベイリーフ”としてよく知られています。植物学名はローラスノビリス、Laurus(賞賛する)nobilis(名高い)という素晴らしい名前をもっています。常緑樹で光沢と芳香のあるしっかりとした葉をつけ、ローレルは栄光と達成、勇気と気高さのシンボルです。昔からこの葉で作った冠は優勝者や英雄、学者や卒業生の頭に飾られています。また病気や悪魔から身を守る木として幸運を願い家の入り口に植えたり、リースを戸口に掛けたりします。
香り:葉(小枝も含む)を蒸留して採られた精油はスッと鼻の奥に届くフレッシュ、スパイシー、カンファー様の力強い爽快感と、かすかにシナモンやクローブの様な甘いベースを合わせ持っています。
性質と効能:ローレルの木はその昔、伝染病の感染を防ぐために重宝されました。抗菌、抗感染作用をはじめ、去痰、利尿、駆風作用があります。脳に浸透していくような独特の香りは、普段入れないどこか遠くの脳、遥か彼方の意識や思考の領域への香りです。革新的なアイデアや仕事にふさわしい香りでしょう。
使い方:ディフューザー、ティッシュなどに1〜2滴落として香りを嗅ぐ。ボディオイル、マッサージオイルとして大さじ1杯の植物油に5滴ほど混ぜる。バスオイルとして小さじ1杯の植物油に2〜3滴混ぜて使う。
小さな太陽 スイートオレンジ 3/3/2018
まるで太陽を小さくしたような、まん丸でビビッドなオレンジ色の果実。見ているだけで明るさと元気が伝わってきます。皮をむいたとたんに飛び散るオレンジのアロマは生命力に満ちていて鼻を近づけて奥の奥まで吸い込みたくなります。甘くてジューシーな果肉は健康の喜びそのものです。先月久しぶりにインフルエンザにかかりエネルギーダウン。回復後は消耗した元気を取り戻そうとこのスイートオレンジをクレイブするように食べて、匂って、体に塗って元気を充電しました。
香り:甘さと苦さとシトラスの香りが凝縮したスイートオレンジの香りは他のオレンジの仲間と比べてくせがなく、そのままでもまたブレンドにも使い易い香りです。オレンジの果皮を圧搾してとった精油は抽出プロセスにより濃い色からうすい色まで、またすっきりした香りから少々皮のなまくささが残るものまで差があります。
性質と効能:甘さと温かみのある香りは神経に栄養を与え、気をゆるめ楽にすることで心身のストレスや体調不良によるエネルギーの低下、鈍い気の流れに活力を与えます。消化器系の神経をリラックスさせることにより消化の働きを助けます。毛細血管・リンパ管を刺激し体液の流れを促進します。
使い方:大さじ一杯の植物油に5〜8滴混ぜマッサージやボディオイルとして体に塗る。ティッシュなどに付け香りをかぐ、室内で蒸散させる、ティーポットで紅茶や好みのハーブティー1カップに対して1滴の精油を入れカップに注いて飲む。
注意:決して未希釈のままお風呂に入れたり、肌につけたりしないこと。肌を刺激します。柑橘類の精油は農薬のかかっていないオーガニックのものを使うこと。
疲労回復 ブラックペパー 2/3/2018
小さなシワシワの真っ黒い粒。ブラックペパーは熟れる前の赤い実を天日に干して作られます。たわわに実った真っ赤な実が枝の先に無数に垂れ下がる様は想像するだけで熱くパワフルです。南西インドの熱帯地方が原産といわれ大昔から各地で価値を置かれてきた薬用植物です。古代ローマではブラックペパーを租税として納めていた時代もあったほど貴重なスパイスでした。インドの修行僧は長い距離を歩く時持って行ったと言われます。ローマ兵も長時間の行進にはこの粒の入った小袋を身につけていたそうです。
香り:さわやかで刺激的な香りは他のスパイスにはない清涼感と、力強い熱さを合わせ持っています。白コショウは皮を取った熟れた実を乾燥するのに対し、若い実を皮つきのまま日干しした黒コショウはボールドで男性的で深みのある香りです。
性質と効能:熱をもたらす性質は組織を温めます。また弛緩した部分に緊張を回復させる性質もあります。緩和な鎮痛作用はリウマチ性関節炎や筋肉疲労に良いでしょう。身体と神経、脳の強化、強壮作用は疲労した気力、体力、集中力を回復させ元気づけます。そしてもうひとつ、この精油の香りは周りに左右されることなく自分の内の正しい声に従って前進する力強さを生み出してくれます。
使い方:小さじ一杯の植物油に2滴混ぜ部分的なマッサージに使う。小さじ一杯の塩と植物油に2〜3滴を加え浴湯によく混ぜ入浴する。大さじ一杯の植物油などのベースにブラックペパーと他の精油を好みでブレンドしたものを5滴ほど加えボディオイルとして使う。ブラックペパーを中心にした好みの精油のブレンドを作りディフューザーで拡散させたり、香水テスター紙などに1〜2滴付けて香りを楽しむ。
注意:香りも作用も強い精油なので必ず希釈してご使用ください。
ヘリクリサム「永遠・不滅の花」 11/4/2017

黄金色の花を咲かせる姿からギリシャ語のヘリオス(helios:太陽)、クリソス( chrysos:黄金)を組み合わせたヘリクリサムをいう名前が付けられました。また、花は乾燥させても黄金色のまま色や形が長持ちすることから別名「エバーラスティング」永遠の、フランス語で「イモーテル」不滅の、という素敵な名前もあります。イモーテル「Immotel」はフランスのコスメ会社L’OCCITANEの最も人気あるスキンケアラインでもあります。
効能:ほかの菊科の植物カモミル、ヤロー、マリーゴールド、アルニカ、ブルータンジーなどと同様、皮膚に対する特別な作用があります。抗炎症作用、抗血栓作用、抗菌作用、鎮痛作用、皮膚細胞再生促進作用、リンパ解毒作用があり、深い効果を秘めた植物です。neryl acetate, curcumene, italidione(di-ketones)という特有の成分を含み、打ち身や青あざの特効薬、筋肉痛、関節炎、切り傷、傷痕、肌のトラブル、にきびなどの症状緩和に役立ちます。
使い方:5−10%くらいに植物油で薄め手のひらにとり香りを嗅いだり、患部に塗る。お風呂に入れる。他の精油とブレンドしてボディオイルやマッサージオイルとして使う。
高い精神性 白檀・サンダルウッド 10/7/2017

インデイアンサマーも終わり本格的な秋の訪れです。冷んやりクリ
スプな空気は身も心も引き締まるようです。さて、2017年も後
半を迎えました。夏の開放的な気分から一転して目の前の現実へと
シフトする時期です。サンダルウッドの香りはその花言葉「平静」
「沈着」にも表されるように、表層を流れる感情の下にある識閾下
の 領域に届き、より高い精神性に導きながら現実の目的に向かって心
を切り替える手助けをする特別な香りです。
香り:自己を主張しない静かで上品な香りは、際立った色彩よりも洗練されたモノトーンのグラデーションを思い起こします。植物より少しだけ人間に近いセクシーであたたかい木の香りは、褪せることなく長く持続する保留性の良い香りです。
効能:抗炎症作用、殺菌作用、利尿作用、気管支炎、スキンケア、内分泌機能の調整、不安神経症、精神統一
使い方:植物油で薄めて、香油として手首や身体に塗る、マッサージオイルとして部分的に使う、パヒュームテスター紙に一滴つけて香りを嗅ぐ。インド産が入手しにくい中、オーストラリア産はおすすめです。くれぐれも本物の良質の精油をご使用ください。
香水のベース ベティバー 9/2/2017

VETIVERという名のパフュームがあるほどベティバーは香水
作りには欠かせない香りです。大変個性的なウッディー、スモーキ
ー、ムスク様、パウダリーな香りは他の香りを揮発から保留し、香
水のベースとして重宝されています。レモングラスなどと同じイネ
科に属し、長くレース状に張りめぐらされた豊かな根から精油は蒸
留されます。ハイチ、レユニオン島、ジャワ島、インドなどで栽培
されています。
香り:木や土、水を思わせる落ち着いた重厚な、しかしどこか官能的な香り。
性質と効能:香水のベースにもなるようにそのリッチな根の香りは、表層の気分だけではなくより奥深いところまで届き、心や精神を落ち着けます。同時にパウダリーでどこかフローラルな香りは、一見男性的な香りの中に女性的な香りを醸し出しています。そのため男性、女性どちらにも魅力的な香りです。男性用のアフターシェイブローションやオーデコロンに、また女性ホルモンのバランスをはかり女性らしい気分にさせてくれるため神経過敏や緊張の緩和とリラックス、同時に気分を引き立てる性質もあります。
使用法:持続性のある香りなので、香水用のテスター紙につけ静かに香りを嗅ぐのもおすすめです。ボディオイルやマッサージオイルなどには他の精油に比べて少なめに(1ozに対して1〜2滴)ご使用ください。紙や布にしみこませクローゼットなどに入れておくと虫除けになります。
注意:香りが強いため使用量に注意。蒸留の仕方や産地により香りに差があります。